日本語を読みやすくする

最終更新 2022.9.7

行間を広くとる

日本語と英語では行間に対する考え方が全く異なります。

フォントのサイズは通常ポイントで表されます。 72 ポイント = 1 インチ = 2.54 cm です。 これは、活字が使われていた頃の活字の高さを表しています。

欧文フォント(アルファベット)の一番代表的なものは Times-Roman です。 10 ポイントの PostScript フォントの Times-Roman の 文字高さは、以下のようになっています。

   a  4.70 point
   b  6.92 point
   c  4.70 point
   x  4.50 point
   X  7.21 point

このように、欧文フォントの小文字うち、a, c, e, i, j, m, n などの 文字の高さはフォントサイズの 45 〜 50 % しかありません。 通常使う文字は小文字ですから、 欧文フォントの場合、10 ポイントの文字に対して、行間を 2 ポイントに設定しても(行送り 12 ポイント)ある程度の行間を 確保することが出来ます。行送り 12 ポイントというのは欧文の 伝統的な値だそうです。

それに対して、日本語の 10 ポイントの 明朝体フォント(リュウミン−ライト)の高さは、 以下のようになっています。

   あ  8.76 point
   い  5.96 point
   う  9.49 point
   え  8.91 point
   お  8.08 point
   の  6.77 point
   旭  8.88 point
   芦  9.28 point
   安  9.29 point
   位  9.19 point

漢字の場合 8.8 〜 9.2 ポイント、 ひらがなの場合は 8.8 ポイント程度が標準的なサイズのように思えます。 だから、10 ポイントの文字を、行間2ポイントで表示すると、 非常に行間が詰まって読みにくくなってしまいます。 日本語の場合、文字サイズの 1/2 以上の行間を入れないと 著しく可読性が低下すると言われています。

このように、欧文フォントと日本語フォントでは、 同じフォントサイズでも、平均的な文字高さが異なります (欧文小文字はフォントサイズの 4.5〜5 割、日本語は約 9 割)。 行間に関しては日本語と欧文では考え方を 完全に変える必要があります。

世の中のソフトの多くは、英語版を日本語化して作成 されています。 ソフトを日本語化するときには、単にアルファベットを漢字や平仮名に 置き換えるだけでなく、行間設定も変える必要があります。 しかし、欧文用の行間をそのまま日本文に持ち込み、 かつ行間を自由に設定できないソフトが多数あります。 非常に見づらいです。

例えば、文庫本では 9 ポイントのフォントに対して行間を 6 ポイント(行 送り 15 ポイント)確保しています。TeX のデフォルトの設定では 9.56 ポイント の日本語フォントに対して行送りを 15 ポイントに設定しています。

日本語を読み易く表示するには、行送りを フォントサイズの 160% 〜 200% 程度に設定すると良いようです。 行間を広く取ると 1 ページに表示可能な行数は減ってしまいますが、 行送りは最低限 150% は確保したいところです。

以下では、よく使うソフトである Web ブラウザと、teraterm、kterm で 行間を設定する方法を紹介致します。

ただし、以下の方法で Web ブラウザの行間を設定すると、 レイアウトが崩れるサイトがあるので、 私は IE はデフォルトのままにしておき、 Firefox を広い行間に設定し、使い分けています。


Firefox

Firefox はユーザー独自のスタイルシートを定義し、 常にそのスタイルシートを使うことが出来ます。これにより、 どんな文書を表示するときにでも自分が指定した行間を 確保することが出来ます。 例えば、スタイルシートの内容を以下のようにすれば、 常に行送りを 180% に設定することが出来ます。ただし、code の タグのときのみ 120% にします。

以下の内容のファイルを userContent.css という 名前のファイルに書き込みます。

----------- ここから ------------ <style type="text/css"> body { } * { line-height: 180% !important;} code { line-height: 120% !important;} </style> ----------- ここまで ------------

Firefox の場合はユーザースタイルシートよりも、 Web ページ中のスタイルシートが優先されますので、 「!important」 を付けて、常にユーザースタイルが優先するようにします。

Windows 10 の場合

C:\Users\yabu\AppData\Roaming\Mozilla\Firefox\Profiles\xxx(ユーザーによって異なる)xxx.default\chrome

というフォルダを作成し、その中に userContent.css を配置します。
その後、FireFox を再起動します。

上記のフォルダは「ヘルプ」→「トラブルシューティング」→ 「プロファイルフォルダ:フォルダを開く」でオープンできます。

Firefox おいて、常に文字のサイズをある値以上にするには、 「ツール」→「設定」 の「フォント」の項目の「詳細設定」で 「最小フォントサイズ」を設定します。

常に背景を黒にして目に優しくするには

「配色の管理」で好みの色を指定し、「常に上書き」を 選択します。


Thunderbird

メーラー Thunderbird で行間を広げるには次のように操作します。

   C:\Users\yabu\AppData\Roaming\Thunderbird\Profiles\xxxxxxxx.default

の下に chrome というフォルダを作成し、そのフォルダ内に、

   userContent.css

というファイルを作成し、その中に

body{
line-height:170% !important;
background: #d5d5d5 !important;
}
と書き込みます。background を灰色した方が目に優しいです。

なお、上記の設定を実行しても効かない場合、Thunderbird の 設定ファイルなどのフォルダが別の場所に設定されています。 私の場合、

   C:\Users\yabu\AppData\Roaming\Thunderbird\profiles.ini

の中は

[Profile0]
Name=default
IsRelative=0
Path=D:\home\yabu\Thunderbird\Profiles\yyyyyyyy.default

となっています。この場合、上記の Path= で指定したフォルダ の中に chrome フォルダを作成してください。

デフォルトの設定では日本語を表示するときに JIS (ISO-2022-JP) で書かれている メールに比べて UTF-8 で書かれたメールはフォントが小さく表示されます。 これを解消するには「ツール」→「オプション」→「表示:書式」→「フォント:詳細」 で対象言語を「Unicode」に設定し、最小フォントサイズを「16」などと 設定します。


Teraterm

Teraterm では行間を設定するには、メニューからでは無理で、設定ファイル teraterm.ini を 直接エディタで編集する必要があります。例えば、

; Space between characters (lines)
VTFontSpace=0,0,6,0

のように設定すると、行間に 6 ドットを開けます。

Teraterm はデフォルトで設定ファイル "c:\Program Files\teraterm\Teraterm.ini" (バージョンによっては、インストールディレクトリは teraterm ではなく TTermpro) を 読み込みますが、/F オプションを使い、起動時に読み込む設定ファイルを指定することが 出来ます。例えば、行間を広くとる設定ファイルを Teraterm-wide.ini とします。 teraterm.exe へのショートカットを 2 つ作成し、ショートカットの「プロパティ」の「リンク先」 をそれぞれ

行間普通  "C:\Program Files\teraterm\ttermpro.exe"
行間広い  "C:\Program Files\teraterm\ttermpro.exe" /F="C:\Program Files\teraterm\teraterm-wide.ini"

のように指定すると、行間が広い teraterm と行間普通の teraterm を使い分けることが 出来ます。


mlterm

Unix で作業するときに使うターミナルソフトである mlterm は lsp というオプションがあり、行間のドット数を 定義することが出来ます。k14 という 14 ドットフォント(デフォルトです)を 使う場合、6〜8 ドット程度確保すると良いでしょう。例 : mlterm -lsp 6


等幅フォントとプロポーショナルフォント

日本語は等幅のフォントで表示するのが基本です。 「MS 明朝」「MS ゴシック」は等幅フォントです。 一方、「MS P明朝」「MS Pゴシック」はプロポーショナルフォント であり、漢字は全て等幅ですが、平仮名とカタカナは、文字毎に 横幅が違います。例えば「く」は狭く、「は」は広くなっています。

等幅フォントは本文を組むときに使われます。 本文をプロポーショナルにすると、ひらがなが詰まった感じになり、 読みづらくなります。

プロポーショナルフォントは「見出し」などのように大きい フォントサイズで少ない文字数の文字列を組むときに使います。 平仮名が続く部分の間延びした感じを防ぎます。

本文は等幅フォントが基本ですが、デフォルトで、 IE, FireFox のフォントはプロポーショナルである 「MS Pゴシック」になっています。これは 「MS ゴシック」に直した方がいいと思います。 あるいは「メイリオ」「HG丸ゴシックM-PRO」が良いかも知れません。

FireFox の場合「ツール」→「設定」 「フォント」→「詳細設定」で設定します。 「Web ページが指定したフォントを優先する」のチェックも外します。

「明朝」か「ゴシック」かはディスプレイに表示する場合は 「ゴシック」の方が見やすいと思います。「明朝」は 「縦棒は太く横棒は細く」というのがそのデザインの基本です。 しかし、紙に印刷する場合とは異なり、ディスプレイに文字を 表示するときは、16 ドットとか 18 ドット程度のサイズに なってしまいます。このサイズでは明朝体の特徴である 線の太さの違いを出すことが十分には出来ず、中途半端な 感じになってしまいます。従って、ゴシックの方が 画面表示用としては 見やすいと思います。