最終修正 2021.8.29
本書の出版後に気がついたこと、補足すべき事項などです。
第 2 章の交流回路の解析において、 電源電圧を E cos wt とおいた。 そして C を複素数とするとき、 電圧・電流を Re{C e^{jwt}} と表す方法を採用した。 実関数で解くときは A cos wt + B sin wt という形式を 採用した。
本書以外の電気回路の教科書では、複素記号法において Im{C e^{jwt}} という形式を採用し、 実関数で解くときは I sin (wt + φ) という 形式を採用する教科書が多い。
最終的に到達する点はどの方法を用いても同じである。
読者の中には、他の教科書と異なることに不安を持つ方が いるかも知れない。様々な流儀による交流回路の解法を以下で網羅した。
p.302 の修正を詳しく説明したのが これ (PDF) です。
信号源の出力インピーダンスを考慮した場合の、 直流成分を付加する回路についての説明が これ (PDF) です。
p.252 からの単電源の非反転増幅回路についての補足が これ (PDF) です。
p.48 の分流器の例題についての考察が これ (PDF) です。
7.3 節で紹介したのとは別のタイプのスイッチ回路を 紹介します。 これ (PDF) です。
p.319 図7.33 の R1, R2 の働きについての より詳しい説明が これ (PDF) です。
本書では他の電子回路の教科書では必ず出てくる 「オペアンプ」「トランジスタ」の周波数特性の話が出てこない。
オペアンプとトランジスタは周波数が高くなると、増幅率が 落ちたり、浮遊容量(配線などにより発生する小さい容量の コンデンサ)が問題になったりする。
オーディオ周波数(上限が 20 kHz)を扱う場合、 本書に述べてある理論で十分対応できると考えられる。
ビデオ信号や無線通信(周波数は 1 MHz 以上)のように、 高周波信号を扱う場合は、高周波特有の問題があると思われるので、 他の教科書を参照してほしい。 私は高周波の電子工作の経験がないため、 そのあたりはよくわからない。
p.316 で「MOSFET のゲートに電圧をかけると、 n チャンネルの通路ができて電流が流れる」と説明している。 MOSFET の基本的な理解はこれでよいが、実際はもう少し複雑である。
p.316 図7.31(c) の反転層の形状は、実は p.323 で説明する「線形領域」 のものである。「飽和領域」においては、これとは少し異なった 形状を持つ。反転層は途中でとぎれており、空乏層がある。 そのことに関しては、 詳しい教科書が 山形大学の廣瀬文彦先生の サイト にある。 深く勉強したい読者はここを参照してほしい。この分野は 「半導体物性」と呼ばれる分野であり、難解である。 「回路が組めればよい」という読者はスルーしてよいと思う。