2018.12
2022.9 追記
386 はオーディオアンプ用 IC の定番品です。 これ 1 個と数個の部品でアンプが作れてしまいます。 出力は 1 W 程度は出るので、 一般家庭で使うには十分な大きさの音量があります。
1 個 100 円程度の IC なので、これまで軽く見ていましたが、 KENWOOD LS-D500 というスピーカー(1987 年頃に 2 本で 7 万円くらい) で鳴らしてみたところ、とても良い音で鳴ります。
386 でアンプを作るにあたって、いくつかノウハウが 必要でしたので、ここではそのノウハウについて述べます。
AC アダプタを使います。昔 Web カメラ用として 使っていた DC 12 V のアダプタが余っていたので、 再利用することにしました。
ヒューズの 0.3 A はとりあえずの値です。 「普通の音量で鳴らしても大丈夫」と「電源 on 時の突入電流に耐える」 の 2 つを満たします。0.2 A でも大丈夫かも知れません。
0.33 uF と 0.1 uF のコンデンサは NJM7800 シリーズの のデータシートに載っている値をそのまま使いました。
緑色 LED の明るさは、調節できるように半固定抵抗を使いました。
データシートに載っている回路の係数を少し変更しただけです。
ボリュームは 10 kΩ を使いました。以前、アンプを作ったとき、 50 kΩ ではクロストークが発生したのに対して、10 kΩでは 発生しませんでした。電流が大きい 10 kΩの方が良いと 思います。
スピーカー接続端子の直前に配置されている直流カット 用コンデンサは、データシートのサンプル回路では 250 uF と なっています。スピーカーが 8 Ωの場合、 250 uF ではハイパスフィルタの カットオフ周波数が 1/(2 pi RC ) = 80 Hz になります。 人間の可聴周波数の下限は 20 Hz です(私の耳では下限は 40 Hz 程度 です)。80 Hz は高すぎるように思うので、2200 uF にしました。 この場合、カットオフ周波数は 9 Hz です。
スピーカーの直前に入れるコンデンサの容量については こちらを見てください。
10 Ωの抵抗と 0.047 uF のコンデンサはゾーベルネットワークと 呼ばれ、発振を防止する働きがあるそうです。データシート通りの 値です。
386 アンプの問題は発振しやすいことです。ネットを見ても 386 アンプの発振に関する記述が沢山あります。
今回使った AC アダプタの出力波形はノイジーでした。 そのような AC アダプタを使うと、ボリュームを 0 にしても、 「キュー」という感じの音がスピーカーから聞こえます。 これを発振と呼んで良いか、自信がないのですが、 ここでは、この「キュー」音を発振音と呼びます。
発振対策の最も強力な方法は
でした。
最初 3 端子レギュレータを使うことを思いつかずに、 色々と試行錯誤しました。 以下の対策により、状況が緩和されました。
電源とアースの間に 1000 uF のコンデンサを入れました。 十分大きな容量だと思われます。386 の直近に配置します。 3 cm 離れて配置すると発振するが、直近に配置すると 発振しないという現象を経験しました。
7 番ピンとアースの間に 10 uF のコンデンサを入れると、 片方のチャンネルは発振音が完全に消えましたが、 もう片方のチャンネルは解消されませんでした。 発振音が解消されなかったチャンネルは 7 番ピンとアースの間を 100 uF で接続しても 発振音は消えませんでした。
7 番ピンと アースの間にコンデンサを入れると良い理由は以下の通りです。
LM386 のデータシートに掲載されている内部回路を見ると、 7 番ピンと電源端子の間は15 kΩ の抵抗が入っています。 電源電圧の交流成分が 7 番ピンに与える影響について考えます。 7 番ピンとアースの間にコンデンサを接続し、 1/(jwC) << 15 k であると仮定すると、 7 番ピンの電圧の交流成分はほぼ 0(分圧の式より)となり、 7 番ピンの電圧は電源電圧の変動の影響を受けません。
このパターンは、コンデンサマイクの回路、 単電源オペアンプの非反転増幅回路などで、 見ることができます。
初段の増幅回路は 7 番ピンとアースの間に配置されているので、 このコンデンサを入れることにより、 電源電圧の変動が入力に影響を与えて増幅されてしまうという ことが起こりません。
10 uF という値は、LM386 のデータシートの サンプル回路から引用しました。 NJM386 データシートでは推奨値が 47 uF になっています。 今回組んだ回路では、片チャンネルは 10 uF で発振が 止まりましたが、もう片チャンネルは 100 uF を接続しても 発振が止まりませんでした。 この容量は大きすぎて問題が起こるということはなさそうですから、 大きめの値の方が安心という方は 47 uF を使えばよいでしょう。
発信音は上記の 2 つの対策では完全に解消することはできず、 結局、3 端子レギュレータを使うことで解決しました。